現在国際的に「癌の三大治療法」として確立されているのが「外科療法(手術)」「化学療法(抗がん剤)」「放射線療法」ですが、これら三大治療法にも限界がありそれに代わるものあるいは補うものとして「代替医療」が取られることがあります。

癌治療の場合、代替医療とは手術・抗がん剤・放射線の三大治療法以外の全ての治療法を指しており、これには先進医療から民間療法まであらゆるものが含まれています。

従ってサプリメントや健康食品など癌治療としては信頼性の低いものもありいかがわしく思われることもあるのですが、医学的・科学的根拠があり確かな効果性が認められているものも沢山あるのです。

がんの代替医療「免疫療法」とは?

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「免疫療法」とは代替医療の1つで、本来人が持つ免疫機能を利用した癌の治療法の総称です。

そもそも免疫機能とは白血球と白血球に異物の存在を知らせる樹状細胞による働きのことで、体内に自分のものではない細胞=異物を発見した際にそれを攻撃し排除します。

癌細胞は細胞分裂の際に起こるDNAのコピーエラーで発生した細胞ですから、これも「異物」であり、本来自らが持つこの免疫機能によって本人も気づかないうちに排除されます。

実際、健康な人でも毎日約5,000~6,000個の癌細胞が発生しているのですが、正常な免疫細胞の働きにより癌を発症せずに済んでいるわけです。

しかし免疫細胞が何かの原因で弱っていたり、癌細胞が発する免疫機能にブレーキをかける物質によって抵抗し切れなくなると、癌細胞が生き延びて増殖していきます。こうして癌細胞が免疫細胞より優位になり、癌を発症するというわけです。

がん免疫療法は大きく2つの種類に分かれます。1つは、がん細胞を攻撃し、免疫応答を亢進する免疫細胞を活かした治療で、アクセルを踏むような治療法といえます。もう1つは、免疫応答を抑える分子の働きを妨げることによる治療で、いわばブレーキをはずすような治療法です。

免疫療法は、本来癌細胞に勝つはずの免疫力を取り戻させることで癌を治療しようという方法です。

前述の通り有効性の認められているものもありますが、「免疫療法」と称する治療法の多くはまだ模索中の段階で科学的に認められているわけではないため、治療の選択には慎重さが求められます。

免疫療法と健康食品の違い

薬

免疫療法には免疫細胞を活性化させる物質を体内に入れて免疫力を高める「能動免疫療法」と、患者が持つ免疫細胞を取り出して培養・活性化し再び体に戻す「受動免疫療法」の2種類があります。

免疫機能を活性化させる物質の中には、食品に含まれるある種の栄養素も挙げられます。

このためサプリメントなどの健康食品も、がん予防や治療の一環として使用される場合、広義においてはそれも「免疫療法」の1つに数えられます。つまり「健康食品」は「免疫療法」の1つと考えられるわけです。

癌に効くとされている健康食品の代表的なものとしては、アガリクスやレイシ、メシマコブなどのキノコ類が代表的で、それ以外にはプロポリスやキトサン、サメ軟膏なども挙げられます。

これらが体の免疫機能を活性化する効果を持つことは確かですが、では癌を予防したり小さくしたり再発を防止したりする効果があるのかというと、これは科学的な裏付けを持ちません。

これが免疫抑制阻害療法やサイトカイン療法など医療機関でうけることのできる免疫療法との大きな違いです。特定の食品摂取に関しては、治療の一環として栄養士から指導を受ける場合などを除いてその抗癌効果に確かな裏付けがないのです。

免疫療法は抗がん剤に比べて副作用が少ない

先生

抗がん剤も免疫療法も、体内のどこに潜んでいる癌細胞にも作用する治療法であるため転移癌や目では確認できない癌にも有効です。

しかし、抗がん剤は癌細胞をピンポイントで攻撃する薬ではなく分裂・増殖している細胞全てに対して作用する薬である為、分裂速度が速ければ正常な細胞をも攻撃してしまいます。

細胞分裂の速い部分、例えば口腔粘膜、胃腸粘膜、毛根細胞などに作用すれば口内炎や味覚の変化、脱毛、吐き気、下痢などの副作用が現れるのです。これが化学療法の最大の問題点と言えるかもしれません。

一方、免疫療法は本来自分が持っている免疫力を高める治療ですから、化学療法は勿論他の治療法と比べても非常に副作用が少ない点がメリットです。免疫細胞が正常な細胞を攻撃することはまずないからです。

免疫療法(効果あり)は、従来の化学療法に比べて副作用が少ないと報告されています。しかし、これまでの薬とは異なる作用をすることから、免疫療法(効果あり)では副作用がいつ生じるか予測がつかないため注意が必要です。

唯一考えられる副作用はアレルギー反応によるもので、アレルギー反応とは免疫力が過剰に反応して本来体に害を及ぼさないはずのものにまで攻撃を仕掛ける症状のことです。

免疫療法によるアレルギー反応としては発熱が最も多いですが、稀にアナフィラキシーショックが起こることもあります。

注目されている『12の免疫療法』

チェックポイント

免疫療法は体全体の免疫力を上げてがんと闘おうという「非特異的免疫療法」と、癌細胞にのみピンポイントで攻撃をしかける免疫細胞を活性化させてがんと闘おうという「特異的免疫療法」の2種類があります。

非特異的免疫療法としては、

  • 温熱療法
  • BRM療法
  • サイトカイン療法
  • αβT細胞療法
  • 活性化自己リンパ球療法
  • NK細胞療法

特異的免疫療法としては以下があります。

  • TIL療法
  • CTL療法
  • 複合免疫細胞療法
  • ANK免疫細胞療法
  • シプリューセル-T

温熱療法とは?

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癌細胞は熱に弱く42~43℃で死にやすくなるという性質がある為、これを利用して癌細胞を攻撃する治療方法が、温熱療法です。

通常正常な細胞は過熱されても血管を拡張して血流を増やすことで熱を逃がすため高温にはなりません。

癌細胞は自らが作り出す新生血管によって必要な栄養や酸素を取り込んでいるため、正常な血管にように自律神経の支配を受けていません。そのため加熱されても熱を逃がすシステムが働かず高温になりやすいのです。

更に温熱療法により病巣周囲の組織が高温になると、免疫細胞が活性化します。このため温熱療法も免疫療法の1つと捉えられることもあります。

温熱療法の副作用は殆どありませんが、熱を加えるわけですから皮膚表面に軽い火傷を負うことがあります。

温熱療法のうち保険適用となっているのは、ラジオ波かマイクロ波を使った局所領域加温療法のみで、3割負担の場合で18,000~27,000円ほどどなります。

また全身温熱療法により心拍数や呼吸数が増加すると心臓や肺に負担がかかり血圧の変動などが引き起こされるため、血圧に問題のある人や体力が低下している人には注意が必要です。

サイトカイン療法とは?

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私たちの免疫細胞は複数種類の細胞が互いに情報を伝え合いながら、癌などの外敵と闘うためにチームプレーを組んでいます。

「サイトカイン」とはその免疫細胞同士の情報伝達物質で、これを人工的に投与することで免疫細胞を活性化させることができます。

バイオテクノロジーにより人工的に大量生産したそのサイトカインを薬として投与し癌に対する免疫力を高めようというのが、「サイトカイン療法」です。

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サイトカインには「インターフェロン」や「インターロイキシン」「TNF」などといったものがありその有効性が認められてはいるものの、一部の癌に対する治療以外は未だ保険診療外となるため、各医療機関によって費用が異なります。

サイトカインを投与すると発熱や悪寒などの副作用が見られますが、これは免疫細胞が活性化され癌細胞と闘っている証拠とも言えます。他に食欲低下や悪心、嘔吐、筋肉痛や頭痛、関節痛などが見られることもあります。

勿論抗がん剤と比べれば体への負担ははるかに軽くて済むのですが、一方で効果を得るために大量のサイトカイン投与が必要になることもあり、そうすると副作用も重篤なものとなってしまいます。これがサイトカイン療法最大の問題点となっています。

BRM療法とは?

きのこ

BRM療法は免疫療法の「はしり」とも言える治療法で、「生体の何らかの反応を変化させるもの」という意味の「Biological Response Modifier」の頭文字をとって名づけられました。

つまり具体的に体内でどんな作用を及ぼしているのか分からないけれどそれにより免疫力が高まるとされる治療法の総称です。

そのように聞くと科学的根拠のない怪しげな治療法のように聞こえるかもしれませんが、実際他の治療法と併用することでその効果性を高めることができるとして多くの医療機関でも採用されています。

BRM療法の代表的なものにはシイタケから抽出される「レンチナン」やカワラタケというキノコから抽出される「クレスチン」などがあり、これらは保険が適用されるため経済的な負担が軽くて済みますし、抗がん剤などよりはるかに副作用が少ない点もメリットです。

しかし癌細胞と直接闘うのではなくあくまで弱った免疫力を回復させる治療であるため、単独での有効性が確認されている治療ではありません。

効果に限界があるため他の癌治療と(多くの場合抗がん剤と)並行して用いられています。

LAK療法とは?

レントゲン写真

免疫療法の中でも患者の免疫細胞を採取して体外で活性化させ、それを体内に戻す方法を「免疫細胞療法」「活性化自己リンパ球移入療法」などと呼びますが、その基礎を築いたのが「LAK療法」です。

1980年代当時、既に免疫療法として前述の「サイトカイン療法」が注目を浴びるようになっていましたが、サイトカインの1つである「インターロイキン2」の効果を十分発揮させるためには大量の投与が必要であり、これによる副作用が問題となっていました。

そこで患者の体内にインターロイキン2を投与するのではなく患者からリンパ球を取り出し高濃度のインターロイキン2と一緒に体外で培養し、活性化された免疫細胞をあらためて体内へ戻すという方法が開発されたのです。

しかしいざLAK療法を実施するとなると、例えば採血が大がかりであり時間がかかる、癌を狙い撃ちする細胞のみを培養することができない、などの様々な問題点が見つかったため、現在LAK療法が治療法として用いられることは殆どありません。

αβ(アルファベータ)T細胞療法とは?

顕微鏡

「αβT細胞療法」とは、自己リンパ球療法の代表的な方法の1つです。

一言で免疫細胞といっても様々な種類がありますが、そのうちαβT細胞は「獲得免疫系細胞」と呼ばれ、「樹状細胞」などから外敵の情報を入手したうえでそれに合わせた攻撃をしかけることができるという特徴があります。

癌細胞の情報を入手しているαβT細胞を培養し活性化させれば、癌細胞のみを狙って効果的に攻撃し排除することができるというわけです。

これに対し、自然免疫系細胞を培養し体内へ戻すと、癌細胞以外の異物へも攻撃力が分散されてしまうため、癌細胞に的を絞って攻撃することができません。この違いがαβT細胞療法の注目点となります。

しかし逆に言えば癌細胞の情報を入手していないαβT細胞を培養しても癌治療に関しては何の意味もないことになります。

これがこの治療法の問題点であり、患者が持つαβT細胞のうちどれ程の細胞ががん細胞の情報を入手しているかによって効果が変わってくるというわけです。

αβT細胞療法は自費診療となり、月額にして約60万円以上になると考えておく必要があるでしょう。

活性化自己リンパ球療法とは?

心臓が痛い女性

「活性化自己リンパ球療法」は「免疫細胞療法」「養子免疫療法」などとも呼ばれており、患者の免疫細胞を採取し体外で培養・活性化した後再び患者の体内に戻すことで、免疫力により癌細胞と闘おうという治療法の総称です。

活性化自己リンパ球療法の先駆けとなったのは前述の通り「LAK療法」であり、LAK療法そのものにも問題点があったものの治療の考え方自体は非常に有効だと考えられています。

化学療法と比べると副作用も少なく安全性が高いものとして更に研究が重ねられ、現在では「αβT細胞療法」ががん治療に有効として採用されています。

αβT細胞の他には、αβT細胞とは別の角度から癌細胞を攻撃する力を持つγδT細胞を利用した「γδT細胞療法」や、生まれながらに外敵の存在をキャッチでき様々な外敵を攻撃することのできるNK細胞を利用した「NK細胞療法」などもあります。

いずれの活性化自己リンパ球療法も自費診療となり各医療機関によって費用は異なりますが、1コース6回の場合で約150~190万円を目安にすると良いでしょう。

NK細胞療法とは?

医者

NK細胞療法も活性化自己リンパ球療法の1つで、その名の通り免疫細胞中のNK細胞を取り出して活性化させる治療法です。

NK細胞は「自然免疫系」と呼ばれる細胞で、生まれつき異物を見分けて攻撃をしかけることのできる「ナチュラルキラー細胞」の中でも非常に強力な部類に属します。

ところが癌細胞は自分にとって大敵であるNK細胞の働きを弱めようとして「免疫抑制」という状態を引き起こします。このためNK細胞が十分に働くことができず癌が増殖していくというわけです。

プログラム

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NK細胞療法ではこの弱められてしまったNK細胞を採取して抑制力を取り除き再び活性化させてから体内へ戻します。LAK療法とは異なる採取方法をとる為、NK細胞の再投与の際にインターロイキンを同時投与せずに済むというメリットがあります。

しかしNK細胞は単独で取りだすのが難しい細胞である上、活性化させすぎると自爆してしまうという性質があるため、一般的なNK細胞療法では十分な活性化NK細胞を作り出すことができないという意見もあります。

また1クール100万円以上になるため、費用的にもかなりの負担がかかるという点も問題点となっています。

TIL療法(腫瘍組織浸潤リンパ球法)とは?

胸を痛がる男性

「TIL療法(腫瘍組織浸潤リンパ球法)」は、癌細胞の情報を認識しているT細胞を培養し体内に戻すことで癌に対する攻撃力を高めるという点では前述の「αβT細胞療法」と原理は同じです。

しかし、両者の大きな違いはαβT細胞療法が普通に採取した血液からT細胞を取り出すのに対し、TIL療法は癌病巣の周辺や腹水・胸水が溜まっている部分からT細胞を取り出すという点です。

普通の採血によってT細胞を取り出した場合、そこに含まれるT細胞の全てが癌細胞の情報を認識しているとは限りません。

しかし癌周辺や腹水・胸水から採取した場合、そこに含まれているT細胞ががん細胞の情報を認識している比率が高くなるため、より効果的に癌細胞を叩くことができるというわけです。

とは言えTIL療法でも取りだしたT細胞の全てが癌情報を認識しているわけではありません。αβT細胞療法よりは比率が高くなるととは言え、100%ではないのが相変わらずの問題点となってしまいます。

またTIL療法もαβT細胞療法と同様自費診療となり高額になってしまうという点もあります。

CTL療法(腫瘍特異的T細胞療法)とは?

薬

前述の通りαβT細胞療法もTIL療法も、採取したT細胞の全てが癌細胞の情報を認識しているわけではないという点が問題点でした。これを解決すべく開発されたのが「CTL療法」です。

本来T細胞が癌細胞と闘う為には樹状細胞から癌細胞の情報をもらわなければなりません。

CTL療法では採取したT細胞の中から癌細胞の情報を認識しているCTL細胞のみを探し出して取り出すのではなく、若いT細胞を取り出して癌組織や胸水・腹水から採取した癌細胞とを一緒に培養し人為的に情報を教え込みます。

こうして出来上がったCTL細胞を培養し体内に戻すというわけです。

このためαβT細胞療法より更に効率的に癌細胞を攻撃でき、副作用も少なく安全性が高い治療法として注目されていますが、癌細胞は増殖する過程で「抗原」と呼ばれるいわゆる癌の目印となるものを変化させることがあります。

抗原が変化すればT細胞に覚えさせた情報とは異なるために攻撃相手を見失ってしまうことになります。これがCTL療法の問題点、限界と言えます。

またCTL療法も、他の免疫療法と同様保険が利かず、高額費用になってしまうという問題点もあります。

複合免疫細胞療法とは?

上昇するグラフ

複合免疫細胞療法」とはその名の通り免疫細胞療法(活性化自己リンパ球療法)を複数組み合わせて行う治療法です。

これまで取り上げてきた「αβT細胞療法」や「LAK療法」などはいずれも特定の免疫細胞のみを培養し体内に戻すという治療法でした。

ただ、実際には体内にいる複数種類の免疫細胞はお互いに協力し合って働いているため、これらを同時に活性化させることより効果的に癌を叩くことができるとして、この複合免疫細胞療法に期待が寄せられています。

免疫細胞の中でもどれとどれを組み合わせるかは医療機関によって様々ですが、代表的なのは5種類の免疫細胞を採取し培養して活性化させる「倉持式5種複合免疫療法」です。

この5種類とは以下をを指しています。

  • 自然免疫系細胞の代表である「NK細胞」
  • 獲得系免疫細胞である「CTL細胞」「γδT細胞」
  • CTL細胞とNK細胞の両方の特質を兼ね備えている「NKT細胞」
  • 外敵の情報をT細胞に伝える「樹状細胞」

ただしこの複合免疫細胞療法はまだ実施している医療機関が少ないこと、自費診療となり6回投与(1クール)だけで合計150万円以上がかかってしまうという点がデメリットとなります。

ANK免疫細胞療法とは?

MRI検査

免疫細胞の中には自然免疫系と呼ばれる生まれながらに外敵を認識する能力を持ちどんな異物であっても単独で攻撃し排除することのできる細胞があり、その代表選手が「NK細胞」です。

しかし癌細胞はそれに対抗してNK細胞を不活発にしてしまう「免疫抑制」を引き起こすため、癌細胞によって不活発にされてしまったNK細胞を採取し培養・活性化させてから体内に戻す方法が、「ANK免疫細胞療法」です。

活性化自己リンパ球療法の先駆けとなった「LAK療法」も同じくNK細胞を採取・培養するというものでしたが、うまくNK細胞だけを分離することができずNK細胞の活性を維持するためには同時に大量のインターロイキン2を投与しなければなりませんでした。

しかしその後、日本の医学博士・勅使川氏が従来とは異なる特殊な方法でNK細胞を分離・培養することに成功し、「ANK免疫細胞療法」と名付けられました。

ただしこのANK免疫細胞療法も自費診療となり12回1クールで約360万円以上もかかること、また免疫力の活性化により40℃近い発熱が副作用として起こるという問題点があります。

シプリューセル-T(プロベンジ)とは?

お腹を抑える男性

シプリューセル-Tは前立腺がんの免疫治療薬ですが、元々は「DCワクチン療法」つまり血液から取り出した樹状細胞に癌の特徴を覚えさせた上で、体内に戻して癌細胞への攻撃に特化したT細胞を体内で作りだすよう誘導する治療法として開発されました。

しかしそれだけでは思うような効果が得られなかったため、NK細胞やT細胞も共に培養する方法に切り替えられ、この時培養抗原として使用されたのが、「PAP」と呼ばれる前立腺にしか存在しないたんぱく質です。

このため、シプリューセル-Tを投与すれば移転した前立腺がんに効果を発揮し、免疫力により癌細胞を攻撃することができるというわけです。

従ってシプリューセル-Tは現在術後の前立腺がん患者でホルモン療法が効かない人に使用される治療薬となっています。

逆に言えば前立腺がんにしか効果が認められておらず範囲が限られていること、また3回投与1クールで1,000万円以上と莫大な費用がかかってしまう点がデメリットとなっています。

癌だけを攻撃する「特異点免疫療法」とは?

医師

1970~1980年代には、既にサイトカイン療法やLAK療法などの免疫療法が開発されていました。

しかし、どれも体全体の免疫力を高めるもので、活性化させた免疫細胞は癌以外の異物をも活発に攻撃をしかけるため、癌細胞のみをピンポイントで攻撃することができずその有効性が証明できませんでした。これが「非特異的免疫療法」です。

しかし21世紀に入り、癌細胞のみを集中的に攻撃する免疫細胞を活性化させるという「特異的免疫療法」の研究が進められ、現実化してきました。

というのも人の免疫細胞にはあらゆる外敵を察知して攻撃をしかける「自然免疫」の他に、特定の異物に対する情報を得てそれに合わせた個々の攻撃を仕掛けることのできる「獲得免疫」という免疫システムが備えられているからです。

この獲得免疫を利用して癌細胞の情報を与え、かつ活性化させることにより癌細胞のみを集中攻撃することが可能になったのです。

現在、この特異的免疫療法が最新世代のがん治療法として注目されています。

樹状細胞ワクチン療法とは?

医者と患者

第四世代の免疫療法と評される「樹状細胞ワクチン療法」とは、外敵の情報を他の免疫細胞に伝える能力に長けている「樹状細胞」を取り出し癌細胞の情報を教え込んでから体内に戻すという治療法です。

免疫細胞の司令塔として、T細胞にがん細胞の目印を伝えます。樹状細胞からがん細胞の目印を伝えられたT細胞は、その目印を持ったがん細胞を攻撃するようになります。この樹状細胞を体の外に取り出し、人工的にがん細胞の目印を取り込ませて、再び体に戻すのが樹状細胞ワクチン療法です。

いわば癌との試合においてプレーヤーに指示を与える監督を訓練することでチーム全体の攻撃力を高めようというものです。

この樹状細胞ワクチン療法では、採血により樹状細胞の元となる単球を取り出し、体外で樹状細胞に分化させた後サイトカインを加えて活性化、がん抗原と共に培養して癌細胞の特徴を覚えさせます。

こうして訓練された樹状細胞を患者の体内に戻してプレーヤーたち(キラーT細胞)を誘導させるのです。

樹状細胞ワクチン療法は癌細胞の特徴を認識していない免疫細胞までも無駄に体内に送り込んでしまう活性化自己リンパ球療法より更に効率的に癌を攻撃することができると考えられます。

ただし患者本人から採取したがん抗原でなければ効果が落ちてしまう可能性がありますし、現在自費診療になるため全額自己負担になるという点もデメリットになります。

ペプチドワクチン療法とは?

ドクター

免疫細胞の1つである獲得免疫系細胞(T細胞)は、一度その外敵の情報を覚え込むとそれに合った効率的な攻撃をしかける能力を持ち、外敵を排除した後も長く体内に残ります。このため私たちの体は一度罹った菌やウィルスに何度も侵されることがないわけです。

これを利用した治療法が「ワクチン療法」で、「ペプチドワクチン療法」とはがんワクチン療法の1つです。

ペプチドとは癌細胞の表面に発現している物質で、キラーT細胞はこのペプチドを目印にして癌細胞の特徴をとらえて攻撃をしかけます。このためペプチドを投与することで癌の目印を増やし、キラーT細胞を活性化させようと言うわけです。

ペプチドは化学合成が可能である為、がん抗原として患者から直接がん組織を取りださなくても人工的に作成できる点がメリットです。

これにより手術が不可能な患者にも投与が可能になるからです。また大量生産が可能で、自家がんワクチンと比べると費用は6回1クールでも70万円程で済むというメリットもあります。

しかしペプチドワクチン療法は「HLA」という白血球の型が人工抗原に合う場合にのみ効果がある方法であるため、稀に白血球の型が合わず受けられない患者もいます。

免疫チェックポイント阻害剤(オブジーボ)とは?

徐々に上昇する棒グラフ

がん患者が自己免疫力により癌を排除できないのは、癌細胞によって「免疫抑制」という状態になってしまうからです。

癌細胞は免疫細胞による攻撃を受けないよう、「PD-L1」という物質を作り出します。T細胞にあるPD-1受容体がこれと結合すると癌細胞への攻撃をやめるようにとの信号が発せられ、T細胞は癌への攻撃を止めてしまいます。

これが癌細胞による「免疫抑制」という状態です。こうして免疫細胞からの攻撃から逃れた癌細胞は、ますます増殖していくというわけです。

「オプジーボ(免疫チェックポイント阻害剤)」とは、先にT細胞の受容体に結合して、癌細胞が作り出すPD-L1とT細胞が結合しないよう阻害する薬のことです。

元々は皮膚がんに対する抗がん剤として開発された薬でしたが、他の癌にも効果があるとして適応拡大が認められその効果が注目されています。

ただ一般的な抗がん剤よりは安全性が高いとは言え、大腸炎、甲状腺機能障害、腎障害などの副作用の危険性がありますし、費用も1ヶ月あたり約300万円と非常に高価であるという問題点もあります。

がん細胞を破壊する「光免疫療法」とは?

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癌治療最大のテーマは、「いかにして他の正常な細胞を傷つけずピンポイントで癌細胞を叩けるか」ということ。免疫療法はこのテーマに則って研究が進められている治療法です。

しかし、近年免疫療法の中でも癌細胞だけを破壊する力が非常に強く、しかも患者の体には負担をかけない画期的な治療法として注目を集め現在臨床実験が進められているのが、「光免疫療法」です。

癌細胞は免疫細胞の攻撃から身を守り生き残る為に、T細胞にPD-L1という物質を結合させて自身を攻撃しないように抑制します。

光免疫療法では、まず癌細胞を保護しているPD-L1と結合したT細胞(制御性T細胞)を破壊して癌細胞を無防備な状態に戻します。

光免疫療法のやり方

やり方としては、まず制御性T細胞に結合する抗体に「IR700」という色素を結合させて体内に注入します。これが癌細胞を守っている制御性T細胞と結合した時を狙って近赤外光を照射すれば、制御性T細胞が破壊されるというわけです。

次いで無防備になった癌細胞をピンポイントで攻撃します。まず癌細胞の表面にある突起物にだけ結合する特性を持つ抗体にIR700を結合させた液体を注入し、体内を巡らせて癌細胞とドッキングさせます。

そこに近赤外光を当てるとIR700が癌細胞膜に傷をつけ、そこから水が入り込んで癌細胞が膨張、破裂します。破裂した癌細胞の破片は免疫細胞が貪食して消滅、免疫力も強化されます。

この方法は体表から2~3㎝以内にある癌に対して有効ですが、奥深い場所にある癌に関しては光ファイバーを使って近赤外光を届けることが可能です。

2017年現在の実験結果によると、光免疫療法は末期がん患者に対して約80%の奏効率(治療により症状が改善した比率)が見られたとのこと。今のところ副作用も認められず、効果と安全性の両方で突出した治療法になるとして期待されています。

がん免疫細胞療法のメリット・デメリット

医者

現在癌の三大治療法とされているのは、「外科療法」「化学療法」「放射線療法」であり、免疫療法はまだこの3つに並ぶ「第4の治療法」としての地位を確立してはいません。

従って、免疫療法を受けるかどうかを決める際には、患者各自がそのメリットとデメリットを正しく把握しなければならないでしょう。

メリット

家族

免疫療法の最大のメリットは、副作用が少ないという点です。抗がん剤や放射線治療では正常な細胞までも攻撃してしまいますし、外科療法では摘出した部位の外見や機能が損なわれてしまう上感染症などの合併症のリスクもあります。

しかし免疫療法はそもそも患者自身が持っている免疫力を高める治療法であり、免疫細胞が正常な細胞を攻撃することはないため、例え副作用があったとしてもそれは免疫力の活性化による軽い発熱程度で済むことが殆どです。

また血液・リンパ液の癌、転移癌に関しては放射線治療や外科治療が効きませんし、体力の低下した患者さんには3大治療法が難しい場合もあります。

しかし、免疫療法であればどんな癌に対しても有効であり、前述の副作用がないという点もあってどんな患者に対しても安全に行うことができます。

治療の選択肢がなくなり行き詰まったかのように思える場合にも、唯一免疫療法だけは残されている治療法と言えるかもしれません。あるいは3大治療の補佐的な治療法として、その効果を高めるために使用することもできます。

デメリット

落ち込む親子

一方で免疫療法最大のデメリットとなるのが、エビデンス(科学的根拠)が乏しい治療法であるという点でしょう。

まだ臨床データが少なく手探りの状態で進められている治療法なので、受けることにした場合にはこの点を覚悟しておく必要があります。

またそれ故に治療ガイドラインが確立されておらず、治療の流れやその内容は医療機関によってマチマチであるという点も問題視されています。費用も高額になることが多く、高い場合では1クールで100万円以上かかってしまうことがあります。

まとめ

診断

現在がんの三大治療と言われる「外科療法」「化学療法」「放射線療法」に続く第4の治療法として期待されている「免疫療法」。

免疫療法とは患者本人が持つ免疫力を人為的に高めることで癌細胞を攻撃・排除させようという治療法の総称で、研究が始められた大きく分けて「非特異的免疫療法」と「特異的免疫療法」の2種類があります。

非特異的免疫療法の中には、免疫力を高めるとされる栄養素を意識的に摂取する「BRM療法」やNK細胞を取りだして活性化させてから体内へ戻す「活性化自己リンパ球療法」などがあります。

免疫力全体を高める治療である為活性化させた免疫細胞が他の外敵にも攻撃を仕掛け効果が分散されてしまうという問題点がありました。

一方T細胞のような獲得免疫系細胞には、樹状細胞から特定の外敵についての情報を得てそれに合わせた攻撃をしかける能力があります。

そのため、これを利用すればピンポイントで癌細胞を攻撃でき、治療効果を高めることができるとして期待されているのが「特異的免疫療法」です。特異的免疫療法にはワクチン療法やTIL、CTL療法などがあります。

自分が元々持っている免疫力を高めるという免疫療法は、他の癌治療と比べて非常に副作用が少なく安全性が高い点が最大のメリットですが、今のところエビデンスが乏しく医療ガイドラインが確立されていないという点がデメリットです。