がんサバイバーという言葉を聞いたことがあるでしょうか?サバイバーという意味は、直訳すると「生存者」という意味です。

一見、がんを克服した人を指す言葉のようにも聞こえますが、実際はがんの治療を終えた方やがんと診断されて間もない方など、がんと診断された方すべてを含むがん経験者のことを、がんサバイバーと呼んでいます。

海外では、がん経験者本人だけでなく、その家族や友人、または介護者も含めて「がんサバイバー」と広く定義されています。

日本においてがんと診断された方の数は2015年現在で533万人といわれていて、将来的には2人に1人ががんになるとも言われています。

昔は不治の病と言われてきたがんですが、医療が進歩したことで早期発見であれば治癒が可能な病気になりつつあります。

しかしながら、進行してからではないと発見できないがんや、自覚症状がほとんど出ない臓器もあるため、残念ながらがんで亡くなってしまう方は少なくありません。

がんという病気と闘っているがんサバイバーの方々がどうやって自分らしく生きていくことができるのか、また、がんと共存しながらどのように社会生活を送っていくのか、という意味も含んでいる「がんサバイバー」なのです。

がんサバイバーシップとは?

診察

がんになったからといってそこで人生が終わったわけではありません。がんと診断されても、自分の人生は続いていくのです。

がんという診断と治療によって大きな影響を受けるのが、今まで何気なく送ってきた日常生活です。

がんを経験してきた人が生活をしていく上で起こる多くの問題や課題を、本人はもちろん家族や医療従事者たちとどうやって乗り越えていくのか、それをサポートしていくのかが、がんサバイバーシップです。

がんとどのように向き合っていきながら生きていくのか、また、それを乗り越えて生きていくことなど、がんと診断されると計り知れない苦労や課題が多くのしかかってきます。

日本においても、がん相談支援センターを設置したり、がんサバイバーによるサポートを充実させています。

がんだからといって社会生活が送れないわけではなく、仕事と治療を両立させながら生活をされている方もたくさんいます。

がんと告知され不安を抱えること、計り知れない落ち込みというのはがんと診断された誰しもが経験するものです。

それを乗り越えどうやって人生を送っていくのか、それががんサバイバーシップを経て得られる知識なのです。

多くのがんサバイバーが悩む体重減少

不眠で悩む女性

がんと一口に言っても部位によって症状などが異なってくるものの、どんながんにせよ体重が減少していきます。

なぜ体重減少してしまうのでしょうか。体重が落ちるのはがんが進行してからが多いのですが、悪液質と呼ばれるいろいろな原因により引き起こされる腫瘍随伴症状があるからです。

がんを作る「サイトカイン」という物質のために、タンパク質をはじめ炭水化物や脂肪代謝といった部分で異常が起こってきます。

つまりがん細胞がエネルギーの消費を増加させるため、体重が減ったり食欲がなくなってしまい、その結果体重がおのずと減ってしまうという症状が出るのです。

残念ながら、悪液質になってしまうと栄養状態を元通りにすることは難しいのが現状です。中でも不可逆的悪液質という状態になると余命は3ヶ月以内と考えられているのです。

がんの悪液質をどのように診断するのかというと、12ヶ月以内に5%の体重減少プラス筋力の低下や疲労感、食欲が落ちているなどといった部分を見て診断されます。

がん悪液質の治療は栄養療法で、早期でがんが発見された場合は経口摂取や経腸栄養などを経て治療を行っていくのが主な方法となっています。

体重減少を改善する方法

粉末

がん患者の多くは体重の減少に悩んでいます。体重を増やしたいのになかなか増えない、食事をしているのに10キロもやせてしまったという方もいるのです。

筋肉量が減ってしまうために体重が落ちてしまうのですが、それを防ぐためにホエイプロテインが注目されています。

一日25~30グラムのタンパク質を摂取しないと骨格筋を維持することはできないと言われていますが、実際にはかなり厳しい数字なのが現状です。

がん患者の場合は特に思うように食事を摂ることが出来ないケースも多いため、高タンパクで高カロリーとされているホエイプロテインがいいと言われているのです。

他にもプロテインはたくさんありますが、なぜホエイプロテインなのかというと、糖質を制限しながら良質のタンパク質を手軽に摂ることができるからです。

糖質を制限されているがん患者さんの場合は、ほかのプロテインは糖質が多いため向いているとは言えないのです。

プラスして筋トレ(レジスタンス運動)を取り入れることで、がんを患うと多くなる体重減少の幅を狭く少なくしていくことができるのです。体調を見ながらできる範囲で行っていきましょう。

がんサバイバーにおすすめしたいこと

先生

がんと診断されたからといって、生活がすぐに一変するわけではありません。仕事と治療を両立させながら生活している方もたくさんおられます。

もちろんがんという病気は移るわけではないですし、がんだからといっておとなしくずっと家の中に閉じこもっていなければならない、というわけではありません。

出掛けたり何か違うことを始めたからといってがんが進行することはないのです。がんと診断されて不安や悲しみ、憤りなどが出てくるのは当たり前です。

もちろんそれがすべてなくなるというわけではありませんが、がんサバイバーとして今をどう生きるのかを考えたとき、後悔のない一日一日を過ごしたいと思いませんか?

ペットを飼う

犬

がんサバイバーの方がペットを飼うといい理由として挙げられるのは、ペットがいることで自然と笑顔が生まれるからです。

ペットの何気ない仕草を見ていると顔がほころびます。これは免疫の活性化にもつながり、治癒力を高めることができるからです。

またペットと過ごす時間があることで気分がまぎれます。がんと診断されると頭の中から「がん」という言葉が離れなくなります。

それは精神的な部分においてもマイナスにつながるため良くありません。

しかしながら、ペットと一緒に過ごすことで癒され気分がまぎれるので、ほんの一瞬だったとしてもがんのことを忘れて過ごすことが出来る時間を作れるかもしれません。

不安や痛みの症状が軽くなる、ペットの面倒をみることが生きがいになる、一緒に歩いたり散歩をすることで運動をすることができるなどといったメリットもあります。

旅行

日本

がん患者は何かが起こったら心配だという理由で、旅行に出かけることに消極的になってしまいます。手術を受けて間もない方、抗がん剤治療中の方は旅行なんて無理だと思い込んでいるかもしれません。

もちろんあまり賛成をしない医師もいるでしょう。ですが、旅行にいくことで現実をはなれた場所へでかけることができるのでストレスが減ります。

さらに、旅行といえばやはりおいしい食べ物を食べるということもありますから、食欲のないがんサバイバーの方でも旅行先ではたくさん食べられた、旅行から戻ったら食欲が出るようになったというケースもあるのです。

旅行では歩きますから適度な運動にもなりますし、一緒に旅行に行った人との絆も深まるでしょう。

アロマテラピー

マッサージ

がんの緩和ケアのためにアロマテラピーを用いる動きが徐々にですが広がってきています。植物から抽出された精油を使い、香りのリラックス効果をはじめ薬理作用が期待できるからです。

さらに直接肌に触れてマッサージをすることで痛みだったりがんと闘うストレスを和らげる効果もあります。

また、予後の知らせを受けている家族にとっても、アロマテラピーを用いることでグリーフケアをすることもできるため、患者を取り巻くすべての方にアロマテラピーはおすすめできます。

アロマテラピーによって心身の状態が緩和されることで、患者と家族間の溝や不安なども落ち着き、和やかな空気に包まれる時間がおのずと増えるというメリットもあります。

マインドフルネス

瞑想

難しく聞こえますがマインドフルネスというのは簡単に言うと「瞑想」です。

瞑想をすることでどんないいことがあるのかというと、ストレス解消につながるのはもちろんのこと、心のコントロール、脳の疲労や集中力を回復することができます。

マインドフルネスは患者をはじめ家族も実践することができます。日本式でいうところの禅のようなものですが免疫力を引き上げることができるという説もあります。

がんと診断されると精神的な部分でのストレスがかなり大きくなります。マインドフルネスはメンタルケアに非常に役立っていて、アメリカでは軍隊や会社などでも導入されているほどです。

温泉

温泉

日本では古く昔から温泉による効能が信じられてきています。全国にはがん患者が集まる温泉があるほどですが、医学では治らないと言われているような病気が温泉に入っただけで治ることはないのかもしれません。

ですが、がんにいいと言われている温泉へ出かけることで「がんを治そう」という気力がわいてくるのです。

さらに、温泉に入ることで血液の流れが良くなりますし、温泉はリラックス効果がかなり高いので免疫力があがり、自然治癒力をアップさせることができます。

確かに温泉でがんが直接的に治る、ということはないかもしれません。しかしながら、それが気休めになったり、リラックスすることによって間接的な効果につながるかもしれないのです。

二次がんとは?予防するためにできること

ドクター

二次がんとは、二次性発がんといい、がんと診断され治療を受けた抗がん剤や放射線治療をしたことで「別のがんが二次的に発生してしまう」ことを指します。

中でも放射線治療というのは発がん性のあるものです。ですので放射線治療により白血病など二次がんが起こりやすくなってしまいます。

治療をした後に出る副作用や障害を、「晩期障害」と言いますが、二次がんというのは数年後という早いスパンで出ることもあれば、20年、30年経って記憶が薄らいできたころに発症してしまうケースもあります。

いつ発症してしまうかわからないのが現状なのです。

ですので、がんの治療を受けて予後が良好だったとしても、予防のために定期的に診断を受けるのが何よりも大切です。定期健診は二次がんを早期に発見するためでもあるのです。

二次がんとして発症しやすいのが軟部肉腫が26%、白血病が16%、大腸がんが12%、皮膚がんが7%となっていて、その他にも膀胱がんや骨肉腫、食道がんや肺がんもパーセンテージは少ないものの、二次がんでなることがあります。

二次がんが発生する頻度というのは、放射線の治療を受けた患者の100人に1人程度と言われていて、決して少ない割合ではありません。

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子供の二次がんの生存率は半分以下

落ちこむ子供

発育途中の子供ががんと診断され治療が完治したとしても、治療を受けていたときの合併症が何年も経ってから出るということも珍しくないと言われています。

小児がん情報サービス「晩期合併症とは」によると、これを晩期合併症というのですが、その中に二次がんも含まれています。

大人よりも子供に二次がんが多いと言われていて、がんを克服してもあと何年も生きることになります。残念ながら二次がんが発見されてしまうと、生存率は半分以下となってしまいます。

過去に抗ガン剤の治療を受けた人、放射線の治療を受けた人は大人になってから白血病や悪性リンパ腫などの血液のがんを発症するリスクが高いとされていいますが、子供のガンにおいては、先天的にがんになりやすい体質の方もいるため、遺伝的な部分においてがんを発症してしまうこともあります。

子供のころに発症してしまったがんで二次がんを発症させないためにも、がんにかかりにくい生活を送ることが大切です。

タバコを吸わない、お酒は適度に、皮膚がんの原因ともなる紫外線を長時間浴びないようにする、バランスのいい食事を心がけ適度な運動とストレスの発散、楽しみを見つける、ということが二次がんの予防につながります。

免疫力を上げて再発を予防する

検査

2015年にNHKでも取り上げられましたが、自分自身の免疫力を高めてがんを治療していく「ガン免疫療法」がクローズアップされています。

がん細胞と戦ってくれているのは白血球の中にあるTリンパ球と呼ばれている細胞です。

がん細胞は正常な細胞を蝕み、機能を失わせていきますが、免疫力をあげることでがん治療につながることが様々な研究でもわかってきています。

がんの治療として行われているのが外科療法、抗がん剤などの化学療法、放射線療法が基本です。

それぞれ特徴があり、初期のがんであれば有効なケースもありますが、転移がみられた場合にはできない治療法などもあります。

転移があると全身ががんと闘うことになるため、身体へのダメージがかなり強くなり副作用も現れやすくなるのです。

しかしながら、自分自身の免疫の状態によって外科療法、化学療法、放射線療法の内容も左右されることがわかってきました。

自身の免疫機能が正常に働いていなければ、どんな治療を行ったとしてもそれぞれの効果を十二分に発揮させることができないのです。

そこでがんという病気と免疫の関係から新しく誕生したのががん免疫療法で、体の中にもとからある免疫の仕組みや特性を生かしそれを強化して、がん細胞を破壊しようという治療法です。

がん免疫療法の研究により、「抗体治療」「免疫細胞治療」「ペプチドワクチン治療」の3つの臨床が進んでいます。

以前までは外科療法や放射線、化学療法が効かなかった方に対して行われていた免疫療法ですが、近年は早期に発見されたがんでもほかの治療と免疫療法を併用して行われていくことが多くなってきました。

手術でがん細胞を取り除いても目に見えないがん細胞が残っていて再発してしまうというケースもあります。

このような場合、化学療法プラス免疫細胞療法が併用されることで、生存率が高くなったというデータもあるくらい、免疫細胞療法は注目されています。

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まとめ

メモをとる人

がんと一口に言ってもいろいろな種類のがんがあります。手術をして取り除いたり、放射線治療や化学療法などを行うことは今も昔も変わりません。

しかしながら自己免疫力を使って治療を行っていくということが生存率を高めたりがんの治療には欠かせないことも研究でわかってきています。

実際にがんになっているマウスを使った臨床で、免疫力が正常なマウスに抗がん剤や放射線の治療をしたところがんが小さくなったものの、免疫力が低く機能が正常に働いていないマウスでは、がんは小さくならず治療の効果が得られなかったという報告もあります。

標準的ながん治療である外科療法、化学療法、放射線療法の効果を最大限に引き出すため、また不治の病と言われている、がんという病気をいかに克服していくかは、自身の免疫力が重要なカギを握っています。

ただ、免疫療法は新しい治療法のため保険の適用外となっています。またすべての医療機関で受けられる治療法というわけではないため、すべての方が免疫療法を取り入れられるかと言えばそうではないのが現状です。

免疫療法を取り入れなくても、自身の免疫力に注目しその機能を高めていくよう努力したり、免疫力が下がらないように気をつけていることが大切です。