子宮頸がんとは子宮がんの1つで、子宮頸部とは子宮上部の胎児を育てる袋状の部分と膣とを繋ぐ管状の部分です。

この部分にできる癌なので「子宮頸がん」、一方子宮上部の袋状の部分は「子宮体部」と呼ばれ、ここに癌ができた場合は「子宮体がん」あるいはその内側の子宮内膜にできることから「子宮内膜がん」と呼ばれます。

2008年の厚生労働省によるデータでは、日本人女性でおよそ年間1万人が子宮頸がんを発症するとされており、乳がんに次いで第二位の婦人科系癌と言われています。(参照:厚生労働省「子宮頸がん予防ワクチンの有効性について」)

また他の癌と違って発症年齢が20~40代と、若い点も特徴的です。

多くの癌は発症原因がハッキリしていないのですが、この子宮頸がんに関しては「ヒトパピローマウィルス(HPV)」というウィルスが原因であることが分かっています。

HPVはどこにでも存在するウィルスで、その種類は100種類以上、皮膚や粘膜の接触によって感染するため、誰しもが感染し得るものです。

ただ子宮頸がんを引き起こすHPVは「16型」と「18型」、稀に「31型」「33型」、「52型」、「58型」などであり、これらは主に性交によって感染します。

従って性交経験のある女性であれば感染する可能性があるのですが、多くの場合感染しても免疫力により自然に消滅するため、それと気づかない間に治っているのです。

しかし長期間に渡って継続的にHPVに感染し続けたり何らかの理由で免疫力がHPVを排除できなかったりすると、細胞表面に異形成と呼ばれる癌の前段階である前がん病変が発生します。

異形成にもレベルがあり中軽度であればそのまま正常な細胞に戻ることもありますが、高度になると子宮頸がんにまで進展する可能性が高くなります。

前がん病変が進むと子宮頸がんの最も初期である「上皮内がん」となり、それが粘膜の奥深くにまで入り込むと「浸潤がん」となりますが、ここに至るまでに10年以上かかる場合が殆どです。

症状について!初期症状はあるの?

不眠で悩む女性

子宮頸がんは異形成という前がん病変を経て癌に発展しますが、異形成の段階は勿論上皮内がんという癌の初期の時点でも全く自覚症状がありません。(参照:がん情報サービス「子宮頸がん」)

従って異変を感じる、つまり自覚症状が出始めるころにはすでに癌が進行してしまっている状態であると考えられます。

自覚症状として一番多いのが、不正性器出血、つまり月経以外の性器からの出血です。あるいは月経血の量が増えたり月経期間が長くなったりすることもありますし、性交後に出血が見られることも珍しくありません。

またおりものに血が混じって茶色っぽくなっていたり臭いがきつかったり膿が混じって緑っぽくなったりと、おりものの異常も子宮頸がんの症状として多くみられます。

更に進行すると腰痛や下腹部痛、更に膀胱粘膜にまで進行すると頻尿や血尿などの尿の異常が、直腸粘膜にまで進行した場合には血便などが症状となって現れます。

しかし前述の通り子宮頸がんは必ず異形成の段階を経て癌になりますから、その異形成の段階、つまりがん細胞ではないけれど正常でもない細胞という状態の時に検査によって発見し治療してしまえば、後遺症の心配もなく完治が可能です。

検査と診断

検査中の女性の医者

子宮頸がんの検査は少なくとも2年に1回行っていれば、子宮頸がんになる前の異形成の段階で発見し完治させることが可能です。検査の方法は2つあり、通常は「細胞診」がとられます。

これは子宮頸部の粘膜細胞を綿棒などでこすり取って細胞を採取し、顕微鏡で調べる方法で、痛みや出血は殆どありません。

もう1つの「HPV検査」は子宮頸がんの原因であるHPVに感染していないかを調べる方法で、細胞診による異常の発見率が43~86%と言われているのに対し、HPV検査は93~97%となっているため、この2つの検査を両方行えばほぼ100%の発見率になります。

これらの検査により異常が認められたなら、更に精密検査を受けることになります。

みんな戸惑う「クラス3a」って何?擬陽性とは?

子宮頸がん検診による結果は、「日母分類(子宮頸部細胞診報告様式)」というクラスⅠ~Ⅴの5段階に分けて表示されます。

「クラスⅠ」は「正常」、「クラスⅡ」は「異常細胞が認められるが良性である」という意味で、これらの場合は今のところ癌の心配はありません。

逆に癌の可能性が高いのが「クラスⅣ」と「クラスⅤ」で、「クラスⅣ」は「悪性癌の可能性が高く上皮内がんではないかと疑われる」、「クラスⅤ」は「悪性であり浸潤がんが疑われる」という意味であり、すぐに再検査や治療が必要となる状態です。

では間にある「クラスⅢ」はどういう状態なのかというと、「擬陽性」と呼ばれるように「癌らしい細胞が見つかったけれど断定はできない」という状態。

これには「Ⅲa」と「Ⅲb」とがあり、「Ⅲa」は「悪性を少し疑う軽度異形成の可能性アリ」、「Ⅲb」は「かなり悪性を疑う高度異形成の可能性アリ」という意味になります。

「Ⅲa」の場合は3ヶ月後くらいにもう一度検査をしてみることが勧められ、その再検査によりクラスⅠやⅡに下がっていれば問題なし、Ⅲb以上に上がっていれば精密検査という措置がとられます。

子宮頸がんの病期(ステージ)と生存率(余命)

いろいろなグラフ

子宮頸がん検査により癌と診断された場合には、その癌の進行度を示す「ステージ」や「病期」という言葉が使用されます。

これは子宮頸がんに限らずどの癌にも共通している指標で、ローマ字数字を使いⅠ期からⅣ期までの4段階に0期を加えた5段階で表現されます。

この5段階の中でもその各範囲の中でどの程度浸潤しているか、またリンパ節への転移や肺などの遠隔臓器へ転移があるかどうかで更に「A」「B」に分けられ、更にⅠ期とは「A」「B」の中で「1」「2」に分けられています。

つまり子宮頸がんの病期(ステージ)を全てここに表記しますと以下になります。

  • 0期
  • ⅠA1期・ⅠA2期
  • ⅠB1期・ⅠB2期
  • ⅡA期・ⅡB期
  • ⅢA期・ⅢB期
  • ⅣA期・ⅣB期

ステージ0(0期)と生存率(余命)

子宮頸がんにおける0期とは「癌が見られない状態」ではなく「かなり早期の癌」という意味で、癌が上皮内に留まっている状態のことです。

ステージ0の5年生存率は93%以上です。

ステージⅠ(Ⅰ期)と生存率(余命)

子宮頸がんにおけるステージⅠは、癌が上皮内より下の組織にまで進んでいるものの、子宮頸部にのみ存在し他の箇所へは広がっていない状態です。

ステージⅠにおける5年生存率は92.3%とされています。

ステージⅠ(A期)、(A1期)、(A2期)について

ⅠA期は組織学的にのみ診断できる浸潤がんで、その深さが5㎜以内縦方向の広がりが7㎜以内のもの。

そのうちのA1期は浸潤の深さが3㎜以内に限定されているもの、A2期は浸潤の深さが3㎜以上5㎜以内のものです。

ステージⅠ(B期)、(B1期)、(B2期)について

ステージⅠの中でも臨床的に明らかな病変が子宮頸部に限局するもの、あるいは組織学的にのみ診断できる程度であるもののⅠA期を超えるものがⅠB期で、そのうちB1期は浸潤が4㎝以内のもの、B2期は4㎝以上のものです。

ステージⅡ(Ⅱ期)、(ⅡA期)、(ⅡB期)と生存率(余命)

癌が子宮頸部を越えて広がっているものの、骨盤壁あるいは膣壁の下3分の1にまで達していないもので、5年生存率は77.6%。

このうちⅡAは癌が膣壁に広がっているものの子宮頸部周辺組織には至っていないもの、ⅡBは癌が子宮頸部周辺組織に広がっているものの骨盤壁にまで達していないものを指します。

ステージⅢ(Ⅲ期)、(ⅢA期)、(ⅢB期)と生存率(余命)

Ⅲ期になると生存率は57.8%まで減少します。ⅢA期は癌が膣壁の下方3分の1にまで達しているものの子宮頸部周辺組織への広がりに関しては骨盤壁にまでは達していないもので、ⅢB期は骨盤壁にまで達しているものを指します。

ステージⅣ(Ⅳ期)、(ⅣA期)、(ⅣB期)と生存率(余命)

ステージⅣの生存率は21.8%。ⅣA期は癌が直腸の粘膜や膀胱に広がっているもので、ⅣB期は小骨盤腔も超えて転移しているものです。

どんな治療法?

手術

癌の三大治療法は「外科手術療法」「放射線療法」「化学療法」とされており、子宮頸がんも例外ではありません。加えて近年では「免疫細胞療法」が注目されるようになり、第4の治療法として選択肢が広がっています。

「外科手術療法」とはその名の通り外科手術によって癌に侵された部分を切除する方法、「放射線療法」とはがん細胞を抑制し攻撃する作用を持つ放射線をあてることで癌の進行を抑制し殺してしまおうという方法です。

この放射線の種類や放射線の当て方によっても呼び名が異なります。

「化学療法」とは抗がん剤を投与して癌を攻撃する方法、そして「免疫細胞療法」とは患者本人が持つ免疫力を高めることで癌を排除しようという方法です。

これらのうちどの治療法を取るかは患者の年齢や合併症の有無などにより異なりますが、一般的には「0期~Ⅰ期の間は外科手術療法」「Ⅱ期やⅢ期では外科手術と並行して放射線療法」「Ⅳ期になると化学療法に加え症状を緩和させるための局所的な放射線療法」など緩和医療が取られることになります。

しかしいずれの場合も患者本人の意思が尊重されるべきで、後悔しない選択をするために医師からの十分な説明がなければなりません。

手術(外科療法)

癌の原発巣及び転移した転移巣を手術によって切除する方法で、癌に侵された部分が大きければ大きいほどその切除部分も広くなります。

0期の初期癌であれば子宮頸部組織を円錐状に切除する「円錐切除術」で妊娠の可能性を残すことができますが、ⅠA期であっても妊娠の希望がある場合にはこの円錐切除術が行われることもあります。

しかし円錐切除術では完全切除が難しいなら、「単純子宮全摘術」がとられ、子宮頸部から子宮体まで子宮の全てを取り除く手術になります。

子宮頸がんがかなり進行しⅠB期やⅡ期にまで達しているなら、子宮だけでなく膣の一部や卵巣、卵管、リンパ節などの広い範囲を摘出する「広汎子宮全摘出術」が行われることになります。

抗がん剤(化学療法)

抗がん剤を投与し癌細胞の増殖を抑制・破壊する治療法で、体のどこに癌があっても攻撃することができるため、遠隔組織への転移がある場合などに有効な治療法です。

あるいは転移がなくても腫瘍サイズが大きい場合に化学療法を行って腫瘍を小さくしておいてから外科手術に臨むこともあります。

子宮頸がんに関しては近年有効な抗がん剤が登場したことから、外科手術や放射線療法と並行して用いられることが多くなってきました。

よく使用される薬としては、「シスプラチン」「マイトマイシン」「ビンクリスチン」「ブレオイシン」といったものが挙げられます。

免疫細胞療法

本来人の体には免疫力が備わっているため、癌細胞が発生してもそれを異物として攻撃し排除することが可能なのですが、免疫力が弱まっていたり癌細胞により免疫力にブレーキがかけられたりしていると、抵抗しきれず癌細胞が増殖していきます。

免疫細胞療法はこの弱まった免疫力を元の状態に戻し、その本来の力により癌細胞を攻撃・排除させようという方法ですが、現在有効性が確認されているのは「免疫チェックポイント阻害剤」などの一部の薬品に限られています。

この免疫チェックポイント阻害薬は癌細胞が免疫細胞にかけたブレーキを解除し免疫細胞を再び活性化させる薬のことです。

放射線療法

子宮頸がんのステージがⅢ期以上になると、化学療法と共にこの放射線療法が主な治療法となります。

一般の放射線療法ではX線やガンマ線といった高エネルギーの放射線を癌細胞に局所的に照射し、細胞を傷つけて小さくしていきます。

放射線の当て方は2通りあり、「外部照射」では放射線を体の外から照射し、「内部照射」では照射器具を膣から挿入して子宮頸がんのある部分に内側から照射して癌細胞を攻撃します。

子宮頸がんにおいては放射線療法は単独で行うより化学療法と併用して行う方が効果が高いことが分かっているため、殆どの場合で並行治療として用いられています。

陽子線治療

陽子線治療は放射線治療の1種ですが、従来使用されるX線やガンマ線が光子線であるのに対し陽子線は粒子線であるため、癌局部だけに作用しやすいという特徴があります。

というのもX線やガンマ線などの光子線は体外から照射すると体表面近くで照射線量が最大となり、その先は次第に減少していくため体の深いところにあるがん病巣には十分に届きません。

しかし陽子線であれば体の表面では放射線量が少なく、ある深さで放射線量を最大にすることができるため、その深さを調整することでがん細胞にのみピンポイントで放射線を当てることができるのです。

また光子線では周囲の正常な細胞まで傷つけてしまうのに対し、陽子線では放射線量がピークに達した後それ以上先には到達しないという性質もあるため、正常細胞へのダメージを最大限に抑えることができるというメリットもあります。

重粒子線治療

重粒子線も陽子線と同じく粒子線の1つで、炭素イオンを加速器で光速の約70%ほどの速さにまで加速させて癌細胞に照射する治療法です。

放射線量が最大になる深さを調節することでがん病巣にピンポイントで作用させることができ、またその先の正常な細胞には届かないというメリットも陽子線と同じです。

しかし、重粒子線の炭素イオンは陽子の12倍の質量があり、加速する粒子が重ければ重いほど粒子線の破壊力も大きくなることから、重粒子線の癌に対する殺傷効果は陽子線の2~3倍になるという点が異なります。

殺傷効果が高い分だけ照射回数を減らすことができ、それだけ治療期間が短くて済みます。

ただ、重粒子線は陽子線以上に装置や施設に費用がかかるため、施術を行っている施設は少なく高額な治療費がかかるという点がデメリットになります。

再発防止は?免疫力を上げて予防する!

いろいろな野菜

子宮頸がんの治療において子宮を温存する円錐切除術や放射線療法をとった場合、2年以内に再発する可能性があるため、定期的な検査が欠かせません。また再発予防のために免疫力を高めることも推奨されています。

そもそも癌が発症するのは、細胞が代謝によって新しく生まれ変わる際にDNAがコピーエラーを起こし傷ついた細胞が生まれてしまうことが原因です。

正常な免疫力があれば傷つき変異細胞となった細胞は異物として攻撃され、破壊し排除されるのですが、免疫力が低下していると変異細胞は破壊されずに残ってしまい、徐々に勢力を付けて増殖、腫瘍となってしまうのです。

従って免疫力が正常に作用していれば異変細胞が悪性腫瘍になる前に排除できる、つまり再発を防止できるというわけです。

免疫力を高めるには、バランスの良い食事を心がけ特に免疫力を強くする効果のある食品を意識して摂ることが大切です。

免疫力を高める効果のある食品とは抗酸化力の強い食品のことで、植物が持つ特有の成分、ポリフェノールなどのファイトケミカルがそれにあたります。

特にトマトに含まれるリコピンの抗酸化作用は非常に強く、ビタミンCも多く含まれるためこれも免疫細胞を活性化させるのに有効とされています。

早期発見・予防のためのスクリーニング検査

医者

既に触れた通り、子宮頸がんは初期症状に乏しく、早期発見できないと子宮摘出手術で治療するしかなくなってしまい、妊娠不可能な体になってしまいます。

更に悪化しステージⅢやⅣになると命の危険さえありますから、定期検診により早期発見を目指すのが最善です。

幸い子宮頸がんはその前がん病変である異形成の状態からゆっくりと時間をかけて悪性腫瘍へと変化していきますから、異形成の段階で発見し治療することが十分に可能です。

子宮頸がん検診のスクリーニング検査は、通常細胞診によって行われます。細胞診は外子宮口付近から細胞を採取し顕微鏡で調べる方法で、内診の必要があるものの痛みなどは殆どなく簡単に行えるものです。(参照:日本産科婦人科学会「研修コーナー」)

子宮頸がんは他の癌とは異なり20~40代と若年齢層に発生しやすいため、この年齢層の女性は2年に1回スクリーニング検査を受けることが推奨されています。

検診は婦人科で受けることができますが、自治体が住民検診の1つとして行っている場合や勤め先によっては健康保険組合の補助を受けることができる場合もあるため、可能であればこれらも有効活用しましょう。

まとめ

メモ

子宮体と膣とを繋ぐ子宮頸部に発生する、子宮頸がん。

その最大の特徴はHPVウィルス感染によるものと原因がハッキリしていること、また前がん病変である異形成を経てゆっくりと、場合によっては十数年かけて癌へと進行していくということです。

従って通常2年に1回ほど検診を受けていれば異形成の段階で発見することができ完治が可能であるため、癌の中では予防が可能な種類のものと言えます。

HPVは性交によって感染するウィルスで、子宮頸がんの発症率は20~40代とされているため、20才以上の女性で特に性交経験のある人は皆、定期的に検診を受けることが推奨されています。

子宮頸がんの治療法も他の癌と同じく外科手術療法、化学療法、放射線療法の3大治療法を軸とし、近年ではこれに免疫細胞療法を加えた4種類の治療法を組み合わせて行います。

治療により無事子宮頸がんが消えたように思えても再発の可能性があるため、引き続き検診は欠かせません。また子宮頸がん予防・再発予防のためにも免疫力を高める食事を心がけましょう。

植物に含まれるファイトケミカル、例えばトマトに含まれるリコピンやブドウなどに含まれるポリフェノール、ニンニクなどに含まれるアリシンなどを意識して摂るようにすると良いでしょう。